資料:阪神淡路大震災による人身被害の実態

阪神淡路大震災による人身被害の実態 (人口動態統計による)

厚生省大臣官房統計情報部人口動態統計課・発表
(『国民衛生の動向』;厚生統計協会、1996年)

平成7年1月17日未明に発生した阪神・淡路大震災は,5千人以上の人命を奪った。ここでは,同年1月から6月の間に震災による死亡が直接の死因(原死因)となった5,488件について述べる。死亡の性・年齢階級別の構成を図1に挙げる。高齢者,特に女性の高齢者に死亡が多かったことがわかる。男女とも20~24歳に比較的死者が多かったのは,被災地に大学が集中していたことによるものと考えられる。
死因では各年齢階級とも窒息・圧死が4,224人(77.0%)と圧倒的に多かった(図2)。死亡の日時では,地震当日である1月17日の午前に4,461人(81.3%),午後も合わせると5,175人(94.3%)と,ほとんどの犠牲者が地震当日に死亡していた(表1)。また,死亡総数54,88人のうち4,330人(78.9%)と大部分が自宅で死亡していた(図3)。
地震の発生が未明であり大部分の住民であったこと,火災が比較的小規模であったこと等の理由により,地震直後の家屋の倒壊による窒息・圧死が死亡の大部分を占めることになったと考えられる。
ここで取り扱った死亡は,震災による被害を直接の死因とした死亡のみであり,医療・救急体制等を考察するためには,震災が医療や住民の心身に与えた間接的影響をも考慮する必要がある。しかし,ここでみた震災が直接もたらした死亡からは,今回被害の中心となった家屋の倒壊が,特に高齢者と女性の命を奪ったことがわかる。今後は,例えば高齢世帯の住環境の改善等の施策に,震災の貴重な教訓を反映させるべきであろう。

図1 性、年齢別(5歳階級)別死亡数

図2 年齢階級(3区分)・死因別死亡数構成割合

表1 死亡日時・死因別死亡数

図3 死亡場所(病院・自宅等)別死亡数及び構成割合