尿管結石は再発することが多く、再発予防はできないものかと質問をよく受けます。尿路結石は様々な要因が重なり合い形成されるため、原因を特定できない場合が多いです。

しかしながら、特定の基礎疾患を有する場合に有意に結石の罹患率が高いことが知られています。
①胃腸疾患(胃潰瘍、クローン病、腸切除)
②クッシング症候群
③長期臥床
④骨折
⑤高尿酸血症(内服薬が原因の場合もあり)
⑥膠原病
⑦緑内障てんかん(内服薬が原因)  などが挙げられます。

このような疾患を有する患者さんは、病気のためや病気に対する治療薬のために、ステロイドホルモンやカルシウム、尿酸などの代謝のバランスが悪くなり結石形成につながるといわれています。このような場合、基礎疾患の治療を行うことや治療薬の変更などで結石の再発が防げる場合もあるため、上記疾患を罹患している患者さんで結石に罹患した場合は主治医の先生にも報告をした方がよいでしょう。

 また、尿路結石と同じ泌尿器科疾患でもある
⑧尿路感染症
⑨尿路閉塞
も結石形成の基礎疾患として重要です。

治療や療養に関してのアドバイス

尿路感染症については尿中の細菌が尿素を分解、アンモニアが発生し尿をアルカリ化、リン酸塩が析出し結石成分となるといわれています。尿路閉塞については尿の流れが滞ると尿中に溶け込んでいる物質が析出しやすくなりこれが結石形成につながるのです。このような場合は泌尿器科専門医の診察を受け対処されたほうがよいと思われます。
また、食生活による再発予防も一般的に知られ、①飲水指導②食事指導があげられます。

① 飲水指導は食事以外に水分を2リットル以上飲むことが推奨されています。しかし、玉露や紅茶、ウーロン茶には結石成分の蓚酸が多く含まれておりこれらの飲料は控えめにした方がよいでしょう。コーヒーにも蓚酸が含まれており、また基礎代謝を亢進させ、尿中の尿酸排出量を増加させるため、多量に飲むことは控えたほうがよいです。砂糖も危険因子の一つであり、もしコーヒー、紅茶を飲まれるのなら砂糖控えめ、ミルクを加えるのがよいでしょう。また、尿管結石の排石目的でビールを飲んで縄跳びをしなさいといわれます。ビールには確かに利尿効果がありますがプリン体が多く含まれ、高尿酸血症(痛風)、ひいては尿酸結石の要因となります。また、飲酒後には利尿がかかり逆に脱水状態となるため結石となりやすい状態になります。ビールを飲むならプリン体offのもので同時に水分摂取をおこなうことをお勧めいたします。また、近年、ソフトドリンクの摂取量が急増しています。砂糖の多量の摂取は尿中カルシウム排泄を増加させるため結石形成の危険因子の一つとして注意が必要です。

②食事指導ですが、以前はカルシウムの摂取制限が結石予防につながると考えられていましたが、カルシウムの摂取量が結石形成の要因ではなく(むしろ結石患者さんのカルシウム摂取量は少ないことが判明)、動物性食品や砂糖、塩分の取りすぎであることが原因であることが明らかになりました。日本人のカルシウム摂取量は不足がちであり、制限は必要ないと現在ではいわれています。また結石成分である蓚酸の摂取についてですが、蓚酸が多く含まれるものとしてはほうれん草、たけのこ、紅茶、チョコレート等私たちの大好きなものが多いです。これらのものは調理や食べ方の工夫をすることで腸管からの吸収を抑えることができます。ほうれん草はおじゃことあえて食べると、紅茶を飲むならミルクティーで、チョコレートならミルクチョコレートで食べるとよいです。含まれている蓚酸はおじゃこやミルクに含まれるカルシウムと腸管の中で結合することで体内に吸収されず便として排泄されるためです。また、三食をバランスよく摂取し、夕食から就寝までの時間を4時間以上あけるようにすることを心がけましょう。またメタボリックシンドロームとの関連も指摘されており、食養生を行うことで結石の予防を行うことができ、かつ健康な生活をおくれるのではないでしょうか。