女性医師に対する支援活動にかかわるようになってから10年以上たちました。その間に女性医師を取り巻く環境も変わってきました。一方 変わっていないこともたくさんあります。
なぜ 女性医師の会があるのか、
問題は、端的に言えば、女性医師が育児と仕事の両立ができずに辞めてしまうことです。そして、それに根付く背景は当初から大きく変わっていません。
今年も日本のジェンダーギャップ指数は116位でした。
女性医師が仕事を辞めてしまうことは、やめざるを得ない職場の環境や個人的な問題があります。ハード面、ソフト面の両方からの改革が必要であり、特にソフト面、つまり周りの人たちや自分の意識改革が最も重要です。
女性医師は医師になるために小さいころから受験勉強をして医学部に入学し、さらに医学の勉強をしてそのまま医師になったため、社会を知らず、比較的狭い世界で生きてきています。しかしながら男性医師と大きく異なり、女性の人生はさまざまであり、医師としてキャリアを積んでいく方法もさまざまであるはずですが、職場の同僚、上司、伴侶である男性医師にも女性医師自身にもその多様性がうまく受け入れられていません。
そして育児という、今までの人生の中でかなり異なった状況に戸惑い、両立できなくなってしまっていることも事実かと思います。
当初、私たちは女性医師が育児と両立できずに離職してしまうことが問題と考え、育児に対する情報提供や職場環境の改善などを主眼に活動してきました。
その後、女性医師を取り巻く環境もいろいろと変化し、院内保育はかなり整備され、病児保育を行う施設も増えてきました。2021年には育児・介護休業法が改正され、育児、出産などによる離職を防ぐため、育児休業が取得しやすい雇用環境整備が求められるようになり、少なからず、医師の職場環境にも影響がありました。また専門医制度が本格的に稼働し始め女性医師のキャリアプランがより明確になったともいえます。
しかし依然として、妊娠出産を経て、仕事に対する意欲が減退してしまうケースが多くみられるのは、多様性を受け入れる準備がまだ不十分だからではないかと思っています。
女性医師それぞれがご自身のキャリアプランについて型にあてはめずに考え直してはどうでしょう。幸いコロナ禍により学会、研究会、教育セミナーなど、オンラインで行われることが多くなり、専門医取得のために必須の学会や教育講演会参加しやすくなりました。
また、家庭を持つ女性医師が参加がむつかしかった平日夜に開催される研究会や勉強会にも参加しやすくなり、勉強する機会や方法も多様化してきています。

仕事は一度やめてしまうと、再開するときにはハードルが高くなります。
ある程度のキャリアを積んだのちであれば、柔軟な働き方を選択することはできますが、例えば専門医を取得する前に休職してしまった場合などはよほど強い意志をもって取り組まなければ、仕事を継続すること自体も極めて困難になるかと思います。
いかに完全に辞めずに継続し続けることができるかということが重要で、それは職場、医局、本人の問題でもあります。

まずは女性医師に限らず、男性医師や職場の上司、管理者などの皆様が、このような諸問題について考える機会を持ち、多様性を受け入れできるような環境に変われるように、われわれは支援していきたいと思っています。

兵庫県女性医師の会
会長 大内 佐智子