ふだんは健康に生活しているのに、急にのどが痛くなって高熱が出て登校や出勤に支障が出る人がいます。口をあけるとのどの奥に左右1対の口蓋扁桃があり、ここが赤く腫れたり膿がついたりしている状態が扁桃炎です。かねてから口蓋扁桃が大きいと扁桃炎になりやすいから手術でとってしまったほうがよいと思っている方が少なからずありましたが、実際はどうなのか解説します。

本当に厄介な扁桃炎とは

 のどの奥には、口蓋扁桃・咽頭扁桃・舌扁桃や孤立リンパ濾胞と呼ばれるリンパ組織が集合しており、外部からの病原体の侵入に備えています。これらの組織は自らが炎症を起こすことでさらに重症の呼吸器や消化器感染症を防いでいるのです。そういう意味で「生理的炎症臓器」とも呼ばれていますが、あまり鋭敏に反応するようになると却って日常生活に支障をきたすことになりかねません。社会的な尺度として年間4回以上高熱や咽頭痛で登校・出勤を控えなければならないような場合、あるいは年間で欠席・欠勤が2週間以上もある場合は反復性扁桃炎あるいは習慣性扁桃炎といい、扁桃摘出術の対象としてよいことになっています。また、扁桃炎を繰り返しているうちに腎炎や皮膚疾患を起こすことがあります。これらの病気も扁桃摘出術により改善する場合が少なからずあります。

扁桃摘出術とはどのような治療か

 手術は約1週間の入院で全身麻酔で行います。両側の口蓋扁桃を丁寧にはがしてとる手術ですが、順調に進めば1時間前後で終了し当日だけベッド上で安静にしてもらいます。むしろ術後ののどの痛みが問題です。手術は従来からあるメスや剥離子を使う方法だけではなく電気メスやレーザーメス・超音波メスなど機器から熱を出して摘出と同時に止血してゆくことも可能になってきました。これら手術機器や薬物の発達により術後の痛みはあまり問題にされなくなっています。ただ傷口を直接縫合できませんので、表面に粘膜が再生するまで術後出血に備えなければなりません。したがって術後1週間以内は静かに病院で過ごしておられたほうが安全です。術後ののみこみや発声に影響が出ることはまずありません。

どこの科にかかったらよいか

 扁桃摘出術は耳鼻咽喉科で実施します。しかし手術が適切かどうかはかかりつけの内科や耳鼻咽喉科の医療機関でまず提案があり、扁桃摘出術も実施できる耳鼻咽喉科が設置されている施設に紹介を受けるのが一般的です。