朝起きられない子ども

Q:中学生の孫が最近、朝起きられなくて遅刻、欠席が目立ちます。午後は元気なのですが何が考えられますか?

A:起立性調節障害(OD)の疑いがあります。

起立性調節障害とは?

たちくらみ、失神、朝起き不良、倦怠感、動悸、頭痛などの症状を伴い、思春期に好発する自律神経機能不全のーつです。症状は午前中に強く午後には軽減する傾向があります。症状は立位や座位で増強し臥位で軽減します。夜になると元気になり、スマホやテレビを楽しむことができ、親からは怠けていると誤解されることもあります。重症例では臥位でも倦怠感が強く起き上がれないこともあります。夜に目がさえて寝むれずに、昼夜逆転生活になることもあります。軽症例を含めると小学生の約5%,中学生の約10%に見られ、不登校の約3-4割にODを並存します。

成因は?

1.起立に伴う循環動態の変動に対する自律神経の働きが上手く行かない

2.過少あるいは過剰な交感神経活動が見られる

3.心理的ストレス(学校ストレスなど)が関与してさらに症状が悪くなる

4.日常の活動量低下により筋力低下、自律神経機能悪化、脳血流低下、活動低下によりさらに悪化する

合併症は?

1.身体面:睡眠障害、失神発作、著しい頻脈

2.心理・行動面:脳血流低下に伴う集中力や思考力の低下、学業低下、長時間臥床など日常生活活動の低下、長期欠席

3.発達障害やその傾向性を伴う学校不適応や不登校

診断方法は?

1.立ちくらみ、失神、気分不良、朝起床困難、頭痛、動悸、午前中に調子が悪く午後に回復する。食欲不振、車酔い、顔色が悪いなどのうち、3つ以上あるいは2つ以上でも症状が強ければODを疑います。

2.鉄欠乏性貧血、心疾患、てんかんなどの神経疾患、副腎、甲状腺などの内分泌疾患など、基礎疾患を除外します。

3.新起立試験をして診断します。

治療は?

1.倦怠感や立ちくらみがひどく朝に起きられず、遅刻や欠席を繰り返します。保護者は「怠け癖」やゲームやスマホへの依存、夜更かし、学校嫌いが原因と考えて、叱責したりしますが「ODは身体疾患である」「根性や気持ちだけでは治らない」と理解を促すことが大切です。

2.日常生活上の工夫:座位や臥位から起立するときには頭部を下げてゆっくり起立する。起立保持は1-2分以上続けずに、短時間での起立でも足をクロスする。水分は1日1.5L以上を摂取し、塩分も多くとる。毎日30分程度の歩行を行い、筋力低下を防ぐ。就床が遅くならないようにします。

3.環境調整:学校と保護者と連携をして、子どもの心理ストレスを軽減することが大切です。

4.薬物療法:非薬物療法を行なったうえで処方(ミドドリン塩酸塩など)

いずれも早い目に小児科専門医に相談してください。