1.マイコプラズマ感染症の流行について 

マイコプラズマ感染症の原因菌はマイコプラズマ・ニューモニエという細菌です。主に小児や若い成人がかかります。潜伏期は2〜3週間で、飛沫感染(咳などで周囲に散らばります)や接触感染で、学校や家族内でうつっていきます。比較的濃厚な接触で感染するため、麻疹やインフルエンザのように地域内で一気に流行することはありません。ただし、症状が軽いことも多く、罹った本人も気がつかないうちに他人にうつしてしまうこともあります。

以前は4年毎、それもオリンピックの年に大流行するため、オリンピック病と言われたこともあったようですが、1984年と1988年の大流行の後は、全国的な周期的な大流行はなくなりました。しかし、診断技術の発達とともに、マイコプラズマ感染症の診断がきちんとできるようになり、患者数は増えています。

 

2.マイコプラズマ感染症の症状

症状は風邪のような発熱や、頭痛、喉の痛みなどで始まり、その後で咳がいつまでたっても治らない、なかなか熱が下がらないなどの症状でみつかります。気管支炎から肺炎になることもあります。比較的、全身状態は良好で肺炎にしてはあまり重症感がないことも多く、学校も休まずにすんだりするので、かえってゆっくり感染を拡げてしまうのかもしれません。しかし、いろいろな合併症(中耳炎、無菌性髄膜炎、脳炎、肝炎、貧血、関節炎など)をおこすこともありますし、肺炎が悪化して入院が必要になることもあります。体力のある子どもや若い人で、菌に対する体の免疫反応が強く出て重症化することもあり、注意が必要です。

 

3.マイコプラズマ肺炎の診断

臨床経過や胸部レントゲン写真の肺炎像でマイコプラズマの感染が疑われたら、血液検査や喉からの遺伝子検査などでマイコプラズマ肺炎と診断されます。咳が長く続く病気には、結核や百日咳、喘息などの病気もあり、きちんと診断を受け、治療することが重要です。

 

4.マイコプラズマ感染症の治療

マイコプラズマは細菌ですが、一般的な細菌と違って、細胞壁というのを持たないため、普通の抗生物質では効果がないため、マクロライド系の抗生物質で治療します。最近は、マクロライド系の抗生物質に耐性のマイコプラズマも増えているようですが、他にも有効な薬剤はあるので、経過によっては変更されることもあります。また、重症化して入院治療をしなければいけないこともありますが、多くの場合は軽症で済むため、過度の心配は必要ありません。とにかく、かかりつけの先生にきちんと経過を診てもらってください。

 

5.マイコプラズマ感染症に何回も罹る?

マイコプラズマは麻疹などのウイルス性疾患とは違って、1回罹ると一生罹らない免疫ができるわけではなく、数年経つと再感染することもあります。場合によっては、1年程度でも再感染することもあるようです。

 

6.マイコプラズマ感染症の予防

他のウイルス性疾患とは違って、ワクチンなどの予防接種はありません。流行期には手洗い、うがいなどの一般的な予防法と、患者との濃厚接触を避けるしかありません。咳が長引く場合には、家族にうつす前に早めに受診してください。

 

 

【関連情報】

国立感染症研究所 「マイコプラズマ肺炎とは」

https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/503-mycoplasma-pneumoniae.html